有料老人ホームのトラブル
有料老人ホームでよく起こるトラブル事例から学びましょう
有料老人ホームでのトラブルとは?
せっかく苦労して有料老人ホームに入居しても、そのホームでの暮らしに満足できない等の理由から退去に至ってしまうケースは少なからずあります。有料老人ホーム側が入居前の説明時に不明瞭や不確かな説明等をしたことにより判断を誤ることなどもありますが、入居者やその家族の方の「不知」や「思い込み、勘違い」などがなければそうしたトラブルも防げたと思われるケースが多くあります。「契約」や「介護」に関する専門用語が多く並ぶ重要事項説明書や契約書ですが、あいまいな理解のまま安易に契約手続きに進んでしまうと後で思わぬしっぺ返しをもらうこともあるのです。
ここでは、具体的に有料老人ホームで起こったトラブルの内容と、それを防ぐための方策について説明します。
料金に関するトラブル
トラブルの原因ナンバー1が料金に関するトラブルです。
- 入居一時金が返還されない
- 【トラブルの内容】
- 経営悪化や経営母体の変更などを理由にして未償却残高(の一部)が返還されない
- 3ヶ月以内の退去で実費を除く全額が返還されるはずなのに、(原状回復費や死亡による退去など)色々理由をつけて返還されない
- 家賃分の前払金のみの返還で、介護一時金にかかわる前払金部分が返還されない、など一時金の一部が返還の対象とならないケース
- 数千万支払って入居契約を締結したのに、現在はキャンペーン期間と銘打って半額以下で入居できる。差が極端であり、差額を返還して欲しい
【トラブルを防止するには】
- ホーム運営会社の経営状態が原因のものは、入居時の確認等が重要なポイントとなります。「契約を急かす」「入居率が低い」「スタッフの定着率が低い」「スタッフの人数が少ない」「財務諸表や事業収支計画書などを開示しない」といった客観的なシグナルを注意深く観察する
- 財務諸表や事業収支計画書を注意深くチェックする。場合によっては専門家に相談する
- 償却に関する部分(償却の対象となる部分とならない部分、初期償却の割合、償却期間など)を確認する。(一時金が数百万以上なのに)初期償却の割合が高い(一般的に20~30%程度)、年齢(平均余命)に対して償却期間が短い、など
- ホーム運営会社の倒産等に備えた一時金保全措置の内容の確認
- 月額利用料について
- 【トラブルの内容】
- 月額利用料が改定されて払えなくなった
- 入院した際に食事は摂っていないのに食費として満額請求された
- オプションサービス利用にともなう料金が高すぎる
【トラブルを防止するには】
- 資金計画をたてる段階で、将来的な利用料の改定、介護度があがることで増える1割負担分、急な入院などに備え、あらかじめ資金計画は余裕を持たせておくことが大切です。お子様等からの援助を見込む場合でも、お子様の経済的環境が変わる(リストラなど)ことも念頭においておくことが大切でしょう
- 入居前にサービス一覧表などを確認し、「別途必要な費用」は何でいくらかかるか?ということを把握しておきましょう
- 食費は(特に介護型では)外泊や入院等で食事をとらなくても、厨房の維持管理費・人件費といったものが必要となります。このため、食費は①満額発生、②一定の負担(食材費部分のみ)が発生、③全く発生しない場合、とホームによって様々です。介護食や治療食・特別食の際の料金加算などとあわせて確認しておきましょう
- その他の金銭トラブル
- 【トラブルの内容】
- 金銭管理を任せていたが、寄付金名目で数千万円が引き出されていた。本人に了承をとったもので返還できないといわれるが納得できない
契約に関するトラブル
料金に続いてトラブルが多いのが契約に関するトラブルです。
- 退去に関するトラブル
- 【トラブルの内容】
- 認知症の症状が重くなったため、退去するように要求された
- 入居時に認知症状があり、その症状などを説明し受け入れ許可をもらったが、(症状の変化が無いにもかかわらず)認知症を理由に退去するよう要求された
- 退去時の原状回復費用として、特に汚していないにもかかわらず、壁クロスの張替えなどの費用も請求されている
- 「終身利用権」とあるのに退去を迫られている
【トラブルを防止するには】
- まず大切な事が、「有料老人ホームはお亡くなりになるまで、(どんなことがあっても)面倒みてくれるところ」という思い込みを改めることです。認知症の程度や他の入居者やスタッフに対して危害を加えたり、昼夜を問わず医療行為が必要になるった場合など一定の要件によってホームを退去しなければらななくなる場合があります。ホームのスタッフ体制などによって、その条件は異なりますが、入居前に重要事項説明書や契約書をよく確認し、死亡以外で退去したケースについて「ホーム側都合での退去ケース」「入居者側都合での退去ケース」について具体的に過去の事例を尋ねるなどよく理解しておくことが大切です。
- 原状回復費用については、一般の賃貸住宅と同様に経年劣化によるものは入居者が負担するものではありません。くわしくは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を御覧ください。
ホームでの生活やサービスに関するトラブル
ホームでの日々の暮らしの中で起こるトラブルです。対ホームばかりでなく、他の入居者との間にもトラブルは起こりえます。
- サービスの提供やホームでの生活について
- 【トラブルの内容】
- 説明を受けたサービスが(決められた回数)行われない
- オムツ交換が適切に行われない。または、トイレに行けるのにオムツを付けさせられる
- スタッフが特定の入居者をひいきする
- スタッフが辞めてしまって人数が少なくなり、コールしても中々来てくれない
- ホームで起こった事故(骨折)について、明確な説明がない
- 介護度が上がったり、認知症状が出たことで、広い居室から狭い居室に移動させられた
- 外部の給食業者が変更となり、食事が気に入らなくなった
- 要望などを聞き入れてくれない
- 他の入居者から暴力や暴言を受けるが、スタッフがきちんと対処してくれない
- 卵アレルギーがあるが、スタッフ間の連絡ミスで卵を使った食事が出され入院加療が必要になった
【トラブルを防止するには】
- ホームの運営懇談会の実施頻度や内容、オンブズマン制度の有無など、ホームの運営に「入居者が参加できる仕組み」や「外部の目を光らせる仕組み」があることを確認しましょう
- 居室の移動が発生する場合は、その条件や費用精算の関係などが重要事項説明書などに記載されていますので、その具体的な内容を把握しておきましょう
- 見学や体験入居の際の「スタッフの応対」「入居者の表情や雰囲気」などが明るく活気にあふれているか?といったことも判断材料の1つとなります